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2007年12月24日

ミュージカル 「Billy Elliot」 ビリー・エリオット

シアターレビュー

完成度の高いミュージカルに新たな感動が沸き起こる

 2000年に世界中で大ヒットした映画「ビリー・エリオット(邦題:リトル・ダンサー)」が舞台化され、ミュージカル「ビリー・エリオット」としてロンドンのヴィクトリア・パレス劇場で幕を上げたのは2005年5月。レビューは総じて絶賛、9つのミュージカル賞を受賞し、150万人の観客を動員、今なお上演中で映画を上回る人気をもつ作品だ。
  そのミュージカル「ビリー・エリオット」がオーストラリアに初上陸するというから、前評判はかなり高かった。そして、約1カ月間に及ぶプレビューを終え、11月13日、堂々とシドニー公演が開幕した。 
  主役となる12歳の少年ビリーは、オーストラリア出身の4人の少年たち(Lochlan Denholm, Rhys Kosakowski, Rarmian Newton, Nick Twiney)が交替で演じる。ビリーの友人マイケル役、少女のデビー役にもそれぞれ4人の少年・少女たちが配される。その全員が、歌、ダンス、タップ・ダンス、バレエ、演技をこなし、まさに若いキャストの新鮮でエネルギーあふれるパフォーマンスがこのミュージカルの原点にあると言える。
  炭鉱夫の頑固な父(Richard Piper)、一風変わったダンスの先生、ミセス・ウィルキンソン(Genevieve Lemon)、物忘れが激しいがやさしい祖母(Lola Nixon)、父と同じ道を生きる炭鉱夫の兄トニー(Justin Smith)、そして友人の女装好きなマイケル(Thomas Doherty, Scott Eveleigh, Landen Hale-Brown, Joel Slater)が、主な登場人物。 
  舞台は1984−85年、イギリス北東部の炭鉱の町。保守党のマーガレット・サッチャー首相は生産性の低い炭鉱の閉鎖に踏み切る政策をとった。炭鉱夫たちはストライキに突入、警官との激しい衝突を繰り返し、1年間の長いストの末に政府の決断に屈する。決して明るいとは言えない時代を背景に、過去の産業に生きることしか知らない炭鉱夫たちの戦いと、その労働者階級に育つ少年が、当時は女の子だけのものとされていたバレエに目覚め、未来の世界へ飛び立つまでを温かく描いている。とにかく笑いあり涙あり、さまざまな人々の立場や感情が生き生きと描かれ、胸に迫ってくる。
  Lee Hallの原作と歌詞による本作は、ロンドン公演の演出家、Stephen Daldryが演出。ダンスの振り付けはPeter Darling、舞台デザインにIan MacNeil、衣裳デザインNicky Gillibrand、照明Rich fisher、そして作曲はエルトン・ジョンという飛びぬけて優れたクリエイティブ・チームが集結した。
  舞台デザインのスケールの大きさに始まり、キャストの個性や場面を生かす衣裳デザイン、明暗のコントラストを舞台いっぱいに活用した照明、そして歌とダンスとバレエでストーリーに豊かな色を付ける音楽と振り付け、すべてに隙がなく完璧なまでに統一されている。
  総勢70人に及ぶキャストたちのパフォーマンスは、シドニーでは久しぶりの大型ヒット・ミュージカル作品。

シアターレビュー

■あらすじ
  ボクシング・グローブとガードを着けたまま、間違えてミセス・ウィルキンソンのダンス教室に入り込んだビリーは、女の子たちの物まねをしながら初めてバレエというものを経験する。タバコを片手に横柄な態度で少女たちにバレエを教えている一見無責任なウィルキンソン先生だが、ビリーにバレエの才能を見出す。
  一方、炭鉱ストが起こり炭鉱夫と警官が衝突。炭鉱夫たちはダイナミックに「Solidarity(結束)」を歌い、徹底抗戦の構え。ビリーの友人マイケルは女装好きで「Expressing yourself(自己表現しよう)」と歌いながら、タップ・ダンスで思いきり自分を表現する。一方のビリーには、「バレエでは食っていけない」と反対する父と兄の存在が。
  悩むビリーは小さいころに死別した優しい母が残した手紙をウィルキンソン先生に見せる。亡くなった母は「常に自分に忠実でいてね」と「Dear Billy(親愛のビリーへ)」を歌う。
  季節はクリスマス、炭鉱夫たちは「Merry Christmas Maggie Thatcher(メリー・クリスマス、マギー・サッチャー首相)」を歌い、サッチャー首相を皮肉る。ストが続く中、将来が見えなくなってきた父はバレエをするビリーを見て、ひょっとしたら才能があるのかと「He could be a star(スターになるかもしれない)」と歌う。
  そして、息子を応援する決意をした父と一緒にロイヤル・バレエ学校のオーディションへ出向くビリー。審査員に「ダンスってなに ? 」と、最後に聞かれ「言葉で説明できない…。なんか、自分でコントロールできないフィーリングで、ダンスをしていると自分を忘れたり、失っちゃう。それが自分の全部のような感じもする…」と答え、「Electricity (電撃的な衝動)」を歌い、思いきりダンスを披露する。
  ついに炭鉱が閉鎖すると決定したその日、「Once we were kings(かつては王者だった)」と炭鉱夫たちは歌い、「常に自分に忠実に生きます」と亡き母の歌「Dear Billy(親愛なるビリーへ)」を母に語りかけるように歌うビリーは、ロンドンへと発つ。自転車に乗ってお別れをしてくれるマイケルにキスをして、ビリーは音楽学校へ !

シアターレビュー

 

information

▼会場:キャピトル・シアター(Capitol Theatre, 13 Campbell St., Sydney)
▼日時:火〜土7:30PM、マチネ水・土1:30PM、日3:00PM 
▼料金:$45〜$112.90 ▼予約Tel: 1300-136-166 
▼Web: www.ticketmaster.com.au(Ticketmaster)

2007年12月01日

トイ・シンフォニー Toy Symphony Company B制作

シアターレビュー

マイケル・ゴウの最新作を
リチャード・ロクスバーが好演

 オーストラリア人劇作家、マイケル・ゴウによる最新の長編劇「トイ・シンフォニー」がニール・アームフィールドの演出で11月14日より公演されている。執筆に行き詰まった1人の作家のメンタル・ブロックを描いたこの作品は、リチャード・ロクスバーによる名演技が話題になっている。
  作家と演出家がシドニー大学時代からの友人という、気心知れた名コンビによって劇化された「トイ・シンフォニー」。マイケル・ゴウは劇「アウェイ(Away)」、「キッド(The Kid)」などで知られる現代劇作家で、演出家も兼ねる多彩な才能の持ち主。新作となる今作は10年ぶりに書き上げた長編劇だ。
  一方、演出家のニール・アームフィールドは数多くの作品・劇場で演出を経験、1994年にカンパニーBの初代アーティスティック・ディレクターとなる。最近は、オーストラリア人新人女優のアビー・コーニッシュとベテラン俳優のジェフリー・ラッシュが出演した映画「キャンディ」の監督で、話題となった人でもある。
  その類稀なる才能でオーストラリアの演劇・映画界で活躍するゴウとアームフィールド。そんな2人によって創り上げられた「トイ・シンフォニー」は前評判も高く、まさに話題作。さらに、主役を演じるのがリチャード・ロクスバーとなれば、その魅力は倍増。ロクスバーは映画や舞台の俳優として輝かしい経歴を持つが、舞台に登場するのは実に7年ぶり。期待を裏切ることなく演技力が問われる役を見事にこなしている。最近ではオーストラリア映画の話題作、「ルミナス、マイ・ファーザー」で監督業にチャレンジ、監督としてもその才能を高く評価された。
  作曲・音響にはポール・チャーマー、照明デザインにはダミエン・クーパー、舞台セットはラルフ・マイヤーズ、衣裳にはテス・スコフィールド。いずれも各分野で名を馳せるアーティストたちが集結した制作チームの舞台の効果は、国内トップ・レベルだろう。
  ベルヴォア・ストリート劇場の舞台に置かれた2つの木製の椅子。それを照らす照明。背景はすべてグレー。そこから劇は始まる。
  今作では1人の作家のゆがんだ心を追求し、その過程を表現。一見シリアスな劇だが、愉快な場面も多く、人間味をたっぷりと含んだ内容は見応え十分。
  主役のロクスバーをはじめとするキャストたちの演技、気の利いた小道具、極端なほどに効果的な照明、舞台のムードを高める音響など、全体が見事に統一され、前評判通りの完成度の高い作品に仕上がった。

シアターレビュー

■あらすじ
プロローグ―酒場

  小説を書く野心を失った作家のローランド(Richard Roxburgh)は、麻薬を常用し、人生の目標もなく、どん底の精神状態にある。友人に勧められて精神科医のニナ(Justine Clarke)の診療を受けることにした彼は、ニナとの面会で意欲を失った原因を探求することになる。面会を重ねていくうちに、青少年時代を振り返ることに。やがてその原因らしき出来事が思い出されるが、その度に不思議な現象が起こる。少年時代に育った出身地のサザーランド地区、コモの思い出、優しかった社会の先生、怖い校長先生、いじめに遭ったこと、交友のニックの死などを思い浮かべて、過去の事実を検証していく。しかし、ローランドは診療の途中でニナとの面会を中断することを決意、現実の世界に戻ることにした・・・。

information

▼上演日時:〜12月22日まで 火6:30PM、水〜金8PM、土2PM・8PM、日5PM
▼劇場:Belvoir St Theatre(18 Belvoir St., Surry Hills)▼料金:$52
▼予約:(02)9699-3444
★Web: www.belvoir.com.au(Belvoir St Theatre)