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QED ほか

シアターレビュー

風変わりな天才物理学者の1日

 1965年にノーベル物理学賞を受賞したリチャード・ファインマン。88年に癌で没するまで、量子電磁力学(QED)の発展に寄与し、ユーモラスな逸話を数多く残すなど多くの人を魅了した彼は、原爆開発のマンハッタン計画にも参加した20世紀の偉大な物理学者の1人として知られている。『QED』は、すべてが極めて順調と思われたファインマンの人生が激変する1日を描いた、実話に基づくピーター・パーネル原作の劇だ。
 舞台はある土曜の午後、カルフォルニア工科大学にあるファインマンの研究室で始まる。 
 ロシアからやって来る研究員の接待について、電話で友人と熱心に話し込んでいるファインマン。話し終え、“What we know”という題で講義をする準備に取りかかるが、また電話が。それは、脳に癌細胞が発見されたという医者からの知らせの電話だった。動揺して考え込む彼の元に、生徒の1人である女学生ミリアム・フィールド(Ivy Mak)が訪れる。夜、パーティーを終えて研究室に戻ったファインマンは、医者から癌検査の精密結果が良くないことを告げられる。1度は手術しないことを決めた彼だったが、ミリアムとの出会いに勇気付けられ、ついには手術をする決心をする。


シアターレビュー

 この作品は、アメリカではアラン・アルダ主演で大好評を得た劇である。ミリアムという生徒が登場するものの、ほぼ1人芝居に近い設定は、観客に物理学的思考を迫る一方、天才的物理学者として脚光を浴びたファインマンの、1人の人間としての側面を効果的に描写している。主演のヘンリ・ゼップ(Henri Szeps)は、優れた学者、妻を亡くして寂しい夫、ボンゴを叩き奇抜な格好でパーティーへ出かけて楽しむ人、女学生のミリアムに異性を感じる男性、そして死に直面する動揺する人、というファインマンのさまざまな側面を見事に演じている。

information

▼会場:アンサンブル・シアター(Ensemble Theatre, 78 Mcdougall St., Kirribilli)
▼日時:〜6月28日、火〜金8:15PM、土5PM、8:30PM、日5PM、木11AM
▼料金:$38〜$62
▼予約Tel: (02)9929-0644
▼Web: www.ensemble.com.au


Death of a Salesman セールスマンの死

シアターレビュー

人間の悲劇を描いたアーサー・ミラーのクラシック

 20世紀の一大劇作家、アーサー・ミラーの傑作にして不朽の名作、『セールスマンの死』。1949年、ピューリッツァー賞を受賞したこの作品はアーサー・ミラーの劇作家としての地位を確立しただけでなく、第二次大戦直後のアメリカの一家庭を描きながら60年経った現代でも人々の心に訴え続けている。
 オーストラリアでは10年前に、アンサンブル劇場でサンドラ・ベイツ演出による『セールスマンの死』が公演され絶賛を浴びた。今回も同氏の演出で、キャストを新たに制作されたもの。主役のセールスマン、ウイリー・ローマンにはショーン・テイラー(Sean Taylor)、妻のリンダにはジャッキー・ウェーバー(Jacki Weaver)と、実生活で夫婦の2人が演じている。


 物語は、かつては有能だったセールスマンが老いて仕事に行き詰まり、ローンの支払いにも窮するようになる。息子たちとの仲もうまくいかず、そんな様子を心配する妻を思いやるウイリーのせつない気持ち、そして不器用な彼が最終的に選ぶ道は…というストーリー。社会の過酷な現実に押しつぶされていく人間の悲劇と、濃密な家庭愛をリアルに描いた感動作。優れたキャストと創作チームによって骨のある作品に仕上がっている。
 5月にシドニー・セイモア劇場での公演を終え、6月は5日間、ペンリスのQ劇場で公演される。

information

▼会場:Q シアター(Joan Sutherland Performing Arts Centre, 597 High St., Penrith)
▼日時:6月10〜13日8PM、14日2PM、8PM
▼料金:$33〜$42
▼予約Tel: (02)4723-7600
▼Web: www.jspac.com.au