Opera Australia
2008年のオペラ・オーストラリアは、ただいま冬公演の真っ最中。今回は、7月に開幕し好評公演中の2作品「ドン・ジョヴァンニ」と「オテロ」を紹介する。前者がドンファン=片端から女に手をつけるプレイボーイ、つまり女たらしのお話で、後者は英雄が妻を愛するあまりに嫉妬にかられて自滅する、という両極端な男たちが主人公のオペラだ。
近年、シドニーのオペラはますます一般庶民に愛されるようになった。演目にもよるが劇場には若い人が目立ち、オペラを楽しむ層が広がったようだ。7月はWYD(世界青年の日)がシドニーで開かれた時期と重なったため、観客の中には神父さんや若いカトリック巡礼者の姿も目にすることができた。気軽に楽しめるのがシドニーのオペラのいいところ。今が熱い冬公演にぜひお出かけを。
「ドン・ジョヴァンニ」
セクシーなドン・ジョヴァンニが魅せる、 斬新な新バージョン
征した女性は2,000人などと自称する好色貴族のドン・ジョヴァンニ。舞台では3人の女性を誘惑するが、どうもうまくいかない。そんな光景を天才モーツァルトが作曲、ドラマ性に優れた音楽で魅了する。
初演が1787年とはいえ、今回のオペラ・オーストラリア制作バージョンは極めて現代風。ハンガリー出身の若手バリトン、ガボール・ブレッツが主役のドン・ジョヴァンニをセクシーに演じれば、麻薬を使用したり、シャワーを浴びるなど、挑発的なシーンが満載だ。超モダンなセットと照明が舞台を効果的に盛り上げ、時代物の作品を思い切って現代風にアレンジして成功している。エルケ・ネインハート演出による新バ
ージョンは前評判通り、斬新でセンスが光る作品と言える。
騎士長(Jud Arthur)の娘、ドンナ・アンナ(Rachelle Durkin)の寝室に忍び込んだドン・ジョヴァンニ(Gabor Bretz)は、見張りに気付かれあわてて逃げ出すはめになり、駆けつけた騎士長と争っているうちに、誤って殺害してしまう。父を殺害されたドンナ・アンナと婚約者のドン・オッターヴィオ(Henry Choo)は復讐を誓う。別の女性の誘惑に忙しいジョヴァンニは反省などする気もない。路上で声をかけた女性は、以前に誘惑して捨てたドンナ・エルヴィーラ(Catherine Carby)だった。次に狙うのは農夫マゼット(Richard Anderson)と婚礼の祝宴をあげようとしている村娘のツェルリーナ(Amy Wilkinson)。誘いをかけるがあと1歩のところでうまくいかない。殺した騎士長の墓地の前で従者レポレロ(Joshua Bloom)と話していると、騎士長像から叱責の声が聞こえる。ジョヴァンニは石像を晩餐会に招待する。本当にやって来た石像に改心をせまられるがそれを拒否し、ジョヴァンニは石像とともに地獄へ落ちて行く。
ドラマチックな音楽で息もつかせぬ展開
シェークスピア原作の悲劇をオペラ化したヴェルディの傑作。シェークスピアの劇は難解さが先行しがちだが、オペラ「オテロ」は字幕がシンプルな英語であることと、とにかく始めから終わりまで独唱、重唱、アンサンブル、合唱など、ヴェルディの音楽が結集され、ダイナミックな音楽と豪華な歌手たちの歌がたっぷりと楽しめる。
初演は1887年ミラノ、今回の公演は2003年に初めてオペラ・オーストラリアで公演されたオペラの再演。
時代は1930年代、アール・デコ風の舞台で、オテロが部下の陰謀に翻弄されていく様や、嫉妬に目がくらみ妻への疑心に苛まれる心の葛藤をドラマチックに描いている。それだけに主役にはドラマチックな声と表現力が要求されるところ。ウエールズ出身のテノール歌手、デニス・オニールがこの大役を堂々とこなしている。また、妻のデズデモーナを演じるソプラノのシェリル・バーカーと、オテロの失墜を狙う部下のヤーゴを演じるテノールのジョナサン・サマーズにも注目したい。この2人は実生活で夫婦であり、ともにオペラ・オーストラリアを代表する素晴らしい歌手である。
洗練された仕上がりのオペラ・オーストラリアの「オテロ」、シェークスピアの原作より入りやすいかもしれない。
◆あらすじ
ベネチア軍を率いたムーア人将軍オテロ(Dennis O'Neill)は艦隊を率いて凱旋。オテロに悪意を抱く旗手のヤーゴ(Jonathan Summers)は、かねてからの企みを実行して、オテロの妻であるデズデモーナ(Cheryl Barker)が副官のカッシオ(Kanen Breen)とあやしい仲だとオテロに思い込ませる。巧みにオテロの嫉妬心をあおるヤーゴ。嫉妬に目がくらんだオテロは次第に自制心をなくし、ヤーゴの操るままとなる。妻の不貞を信じたオテロは自らの手で妻を締め殺すが、すべてがヤーゴの陰謀だと知り、短剣で自害する。
information
『Don Giovanni』
▼上演時間:3時間(20分休憩1回を含む)、歌イタリア語(英文字幕付)
▼上演日時:8月7・9・15・21・23日7:30PM、マチネ8月26・29日、9月3・5・10日1PM
『Otello』
▼上演時間:2時間45分(20分休憩1回を含む)、歌イタリア語(英文字幕付)
▼公演日時:8月2・8・13日 7:30PM、マチネ16日 1PM
▼会場:シドニー・オペラ・シアター(Sydney Opera Theatre, Sydney Opera House)
▼料金:特別席$240($246)、A席$190($196)、B席$135($140)、C席$99($102)D席$65($67)、カッコ内は土曜夜の部
▼チケット予約Tel:(02)9250-7777
★Web: www.opera-australia.org.au


