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Opera Australia IlTrittico/ホフマン物語、ゴンドラの漕ぎ手

2007年10月04日

 オペラ・シアターで上演されているオペラ・オーストラリアのウインター・シーズン公演も残すところ2カ月余り。10月8日上演開始のワーグナー作曲「タンホイザー」、そして9月から上演されている「ホフマン物語」と「ゴンドラの漕ぎ手」の3演目で、11月3日の最終日までの上演となる。今月は後者2作品を紹介する。

シアターレビュー

ホフマン物語
The Tales of Hoffmann
オッフェンバック作曲

異なる女性4役に堂々と挑戦
エマ・マシューズの力量に大喝采

「ホフマン物語」はドイツ・ロマン派の作家、E.T.A.ホフマンの短編小説をもとに、詩人ホフマン自身を主人公に3つの失恋を描いた幻想的な物語を、オッフェンバックの魅力的かつ官能あふれる作曲で描いた。
「天国と地獄」など数多くのオペレッタで成功した作曲家オッフェンバックが、初めて本格的オペラに力を注いだ作品だが、彼自身は完成前に死去。友人のエルネスト・ギローが後を引き継いで完成させたが、1881年にパリ・オペラ・コミック座で初演された後、オッフェンバック本人の意図が明らかでなかったことから幕の順序が異なる版が存在するなど混乱を生んだ。
  今回のシドニー公演はスチュアート・モーンダー演出により新しく制作されたもの。ロジャー・カークの舞台デザインは、対角に大きな壁を設置して舞台を2分割、2つの舞台セットを回転させる仕組み。天井に設置された鏡が舞台の広がりを高め、右手には大階段が常設されるなど、斬新で画期的な舞台を作り出した。モダンな舞台装置は、ナイジェル・レヴィングスによる照明デザインでさらに効果アップ。演出助手を兼ねるエリザベス・ヒルによる洗練された振り付けも舞台を大いに飾る。
  詩人ホフマンにはオーストラリア人テノール歌手のロサリオ・ラ・スピナ、同じくオーストラリア人のソプラノ歌手、エマ・マシューズが「オリンピア」、「ジュリエッタ」、「アントニア」そして「ステラ」という4役を個性豊かに演じ分けるという離れ業に挑戦し、見事にやってのけた。機械仕掛けの人形役「オリンピア」の滑稽なシーンでは、観客の爆笑を誘う一方、美しいコロラトゥーラのアリアも見事に歌いこなし、磨きがかかったエマ・マシューズの演技と歌唱力を楽しむオペラと言っても過言ではない。
  過去にいくつもの版が発表された「ホフマン物語」がまた、優れた制作チームとキャストよって、新鮮味あふれる洗練された作品になった。

シアターレビュー

■あらすじ
プロローグ―酒場

  詩人ホフマンの才能を愛する美と芸術の女神、ミューズ(Pamela Helen Stephen)はホフマン(Rosario La Spina)の恋人、美しいオペラ歌手のステラ(Emma Matthews)に嫉妬している。ミューズはホフマンの友人ニクラウス(Pamela Helen Stephen)に変身してホフマンと行動をともにする。酔客たちが楽しげに歌ったり踊ったりしている酒場へニクラウスと現れたホフマンは、学生たちの勧めで酒を飲むうちに、3つの恋愛話を始める。

「オリンピア」
―発明家スパラザーニ博士の応接間 

  博士(John Pringle)は人形作りのコッペリウス(John Wegner)に作らせた機械仕掛けの人形オリンピア(Emma Matthews)を自分の娘としてパーティーで披露する。人形は歌うが、途中でぜんまいが緩んで調子が狂う。コッペリウスからもらった魔法の眼鏡をかけ、オリンピアに一目惚れをするホフマン。しかし、スパラザーニ博士が不当な支払いをしたことに怒ったコッペリウスが、仕返しにオリンピアを破壊してしまう。

「ジュリエッタ」
―ベネチアの運河沿いの宮殿

  ニクラウスは高級娼婦ジュリエッタ(Emma Matthews)と『ホフマンの舟歌』を歌う。ジュリエッタに恋するホフマンは『熱い欲望をもって』を歌うが、ジュリエットを愛するシュレミル(Richard Anderson)はおもしろくない。そこに不気味な魔術師ダペルトゥット(John Wegner)が現れ、彼に宝石でそそのかされたジュリエッタは言い寄る男たちの“影”を奪い取る。ジュリエッタをめぐる決闘でシュレミルに勝ったホフマンは逃げ去るはめになる。

シアターレビュー

「アントニア」
―クレスペル家の一室

  母親譲りの美声の持ち主、アントニア(Emma Matthews)は胸の病に冒されており、父親のクレスペル(John Pringle)から歌うことを禁止されている。ホフマンがアントニアとの再会を喜ぶもつかの間、不気味なミラクル博士(John Wegner)が訪ねてくる。博士はアントニアの亡くなった母親の肖像画を操り、死に導くべく彼女に歌を歌わせる。歌い終わり、力尽きて倒れるアントニア。そこに父親が駆けつけるが、時遅く、彼女は息絶える。

エピローグ―酒場
  泥酔してテーブルにうずくまるホフマン。失恋相手の3人の女性は、つまりステラであるとニクラウスに言われて怒って暴れる彼の前に舞台を終えたステラが現れる。泥酔して正気を失ったホフマンは彼に歩み寄ってきた彼女にくってかかる。ステラは恋敵のリンドルフの腕にすがりながら連れられて出て行く。ニクラウスの姿をしていたミューズは元の姿に戻り、ホフマンはミューズの幻影を見る。

information

▼上演日時:10月3・6・9・12・15日7:30PM〜
▼上演時間:3時間10分(20分間の休憩1回を含む)、歌フランス語(英文字幕)
▼料金:$54〜$233
▼予約:(Opera Australia Ticket Services)、(Sydney Opera House Box Office)
▼Web:

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シアターレビュー

ゴンドラの漕ぎ手
The Gondoliers
ギルバート&サリバン作曲・作詞

日常のたわいもないストーリーを
面白おかしく描いたコメディー

「ゴンドラの漕ぎ手」は滑稽なストーリーを軽快な音楽で綴った、ギルバート&サリバン作詞・作曲の陽気なオペラ。ギルバート&サリバン作詞・作曲の作品は、イギリス発祥のサヴォイ・オペラの代名詞ともされ、本格的オペラとはまた違った味で親しまれている。代表作品には「ミカド」や「軍艦ピナフォア」があるが、「ゴンドラの漕ぎ手」も傑作と言っていい。
  今回のシドニー公演は、昨年メルボルンで公演され、好評を博した時と同じキャストで贈る。エンターテイナーとして知られるレジ・リヴァモアを筆頭に、ジュディ・コネリやジョン・ボルトン・ウッドなど新旧のオペラ歌手が競演する。
  ブライアン・マクドナルドによる演出を元に、スチュアート・モーンダーが手を加え再演出。スーザン・ベンソンによる趣向を凝らした舞台とカラフルな衣装デザイン、やや大げさなエリザベス・ヒルによる振り付けも可笑みを増すのにひと役買っている。
  プラザートロ伯爵(Reg Livermore)と伯爵夫人(Judi Connelli)そして娘のカシルダ(Natalie Jones)をめぐるゴンドラの漕ぎ手たちと、その妻たちの陽気でたわいのないストーリー。小気味良いテンポで描いている今作品は誰もが楽しめるオペラと言える。

information

▼上演日時:10月2・4・10・13・17・18・19・24・25・26・29・31日、11月1・3日7:30PM〜、
マチネ10月6・13・31日、11月3日1PM〜
▼上映時間:2時間50分(20分1回の休憩を含む)、歌英語(英文字幕)
▼料金:$46〜$150
▼予約:(Opera Australia Ticket Services)、(Sydney Opera House Box Office)
▼Web:

Opera Australia IlTrittico/三部作 プッチーニ作曲

2007年09月04日
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磨きがかかったチェリル・バーカーの魅力満載

 珠玉の1幕オペラを1つにまとめた連作「三部作」は、プッチーニが完成させた最後のオペラ。パリで観た人形芝居と、ダンテの「新曲」の地獄篇・浄罪篇・天国篇の3部構成にヒントを得て構想したと言われる。
  各幕は1時間に満たないが、プッチーニの美しい旋律と歌が3幕にわたって存分に味わえるドラマ性に富んだ印象的な作品。ヴェリズモ風の暗い悲劇「外套」、宗教的な悲劇を描いた「修道女アンジェリカ」、プッチーニでは珍しいオペラ・ブッファ(喜劇的なオペラ)の「ジャンニ・スキッキ」という3つの異なる性格を持ったオペラで構成されている。
  1918年に完成された同作品は、世界大戦のためにヨーロッパでの公演ができず、ニューヨークのメトロポリタン劇場で同年12月14日、初演された。今回のオペラ・オーストラリアの公演は、1973年のシドニー初演時と同様、モファット・オクセンボールド演出のプロダクションが再び手掛ける。各幕に登場する主役の女性を、オーストラリアの人気ソプラノ歌手、チェリル・バーカーが通して演じ切り話題を呼んでいる。最近、声と演技にますます磨きがかかり、オーストラリアの代表的なソプラノ歌手としての地位を築きつつあるバーカー。今公演では、実生活で夫のジョナサン・サマーズと共演。ともに国際舞台で活躍する2人の息の合った演技も作品の魅力の1つとなっている。
  また、第3幕でジャンニ・スキッキの娘のラウレッタが歌うアリア「私の優しいお父さま」は美しい旋律でよく知られる曲である。

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■あらすじ
第1幕
「Il Tabarro/外套」

  1900年ごろのパリ。セーヌ川に浮かぶ伝馬船の船長ミケーレ(Jonathan Summers)は、若い妻のジョルジェッタ(Cheryl Barker)と雇い人の沖仲士のルイージ(Denise O`Neill)が恋仲であることに気付き、船上でルイージの首を絞めて殺してしまう。そこへ妻が戻ってきたため、その死体を自分の外套で包み隠す。

第2幕 
「Suor Angelica/修道女アンジェリカ」

  17世紀後半のイタリア。7年前、公爵令嬢でありながら未婚で子を産んだため修道院へ入れられたアンジェリカ(Cheryl Barker)。遺産相続の件で修道院を訪れた冷徹な伯母(Milijana Nikolic)から愛しい息子が2年前に死んだことを知らされ、絶望したアンジェリカは薬草で毒を調合し、死を選ぶのだが…。

第3幕 
「Gianni Schicchi/ジャンニ・スキッキ」

  金持ちのブオーゾは遺産のすべてを修道院に寄付する遺言状を残して死んだ。遺産目当ての親類たちは怒り、ブオーゾの友人であるジャンニ・スキッキ(Jonathan Summers)に相談する。スキッキは欲深い親族にあきれ果てるが、ブオーゾの親戚であるリヌッチオと婚約している娘のラウレッタにもせがまれて、問題解決に乗り出す。そして、スキッキは自分がブオーゾになりすまして、遺言状を書き換えることを提案する。その遺言状とは…。

▼上演時間:3時間30分(休憩2回)、歌イタリア語(英文字幕) ▼会場:オペラ・シアター(Opera Theatre, Sydney Opera House)▼上演日時:9月12・15・19・22・26日、7:30PM〜 ▼料金:特別席$228、A席$183、B席$130、C席$99 ▼予約
▼Web:

Opera Australia Rabbit Hole/ラビット・ホール

2007年09月04日
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心の傷をウィットに富んだ表現で昇華

 2006年2〜4月にブロードウェイで上演された「ラビット・ホール」は、07年のドラマ部門ピューリツァ賞を受賞した、デイビッド・リンゼイ=アベアーのドラマ作品。ある家庭に起こった不幸、心の葛藤を、家族や友人たちの交流を通して描く。ブロードウェイのヒット作品を多数上演するアンサンブル劇場の最新作であり、人間ドラマには定評がある同劇場のアーティスティック・ディレクター、サンドラ・ベイツが演出を手掛けている。
  比較的小さな劇場を目いっぱいに活用した2階建ての舞台セットで、キッチン、居間、そして子ども部屋を舞台に物語は繰り広げられ、観客はキャストに親近感を抱かずにはいられない。オーストラリア人人気女優のジョージー・パーカーを中心に息の合ったキャストの演技と、緊迫感の中にもユーモアを含んだ人間ドラマは、日常生活で起こり得る喪失と自責、深い悲しみを丹念に描き、最愛の人がいない世界での生き方を問う。

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■あらすじ
 ベッカ(Georgie Parker)とハウイ(Mark Kilmurry)夫婦の幸せな家庭は、4歳の1人息子の交通事故死により一変。幼い息子を失った悲しみから夫婦の間には溝が生じ始めていた。夫のハウイは悲しみの中でもなんとか夫婦関係を修復しようと努力するが、ベッカは深い悲しみから抜け出せないでいる。
  ベッカの母ナット(Lorraine Bayly)もまた、息子であるベッカの兄が麻薬中毒死したことの悲しみを抱えている。一方、自由奔放に生きるベッカの妹リジー(Queenie van de Zndt)は、短い恋愛で妊娠したことを告げ、家族をうろたえさせる。そんな中、夫婦の息子の死を招いた自動車を運転していた若者、ジョナサン(Jonathan Prescott)が訪ねて来る。家族との感情のやりとり、若者との面会によりベッカは次第に深い心の傷が癒されていくのを感じる。

▼会場:アンサンブル・シアター(Ensemble Theatre, 78 McDougal St., Kirribilli)▼上演日時:〜9月22日、火〜金8:15PM 土5PM、 8:30PM 日5PM 木11AM
▼料金:$37〜$61 ▼予約
▼Web: www.ensemble.com.au

Opera Australia 後宮からの逃走

2007年08月02日
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 1782年ウィーンで初公演された「後宮からの逃走」は、モーツァルトが作曲した最初の本格的オペラ作品として知られる。ジングシュピールと呼ばれるドイツ語の歌芝居で、コロラトゥーラ的歌唱(ソプラノ独唱でよく行われる技巧的唱法)から超低音のバスまで、さまざまなアリアが盛り込まれており、モーツァルトの美しい旋律が存分に楽しめる。また、ストーリーも比較的単純で娯楽作品として楽しめる要素が強いのも特徴だ。

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国際空港を舞台にしたモーツァルトの現代版オペラ エマ・マシューズの声量が光る

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 今回のオペラ・オーストラリア公演は2000年に初演され、その斬新な舞台設定が話題となったマイケル・ゴウ制作の再公演。ジョナサン・ダーリントンを指揮に迎え、ヒロインのコンスタンツェをオーストラリアの人気ソプラノ歌手、エマ・マシューズが初めて演じる。 
  ストーリーはヨーロッパの旅人がトルコ人に捕らわれ、遥かトルコのハーレムに売り飛ばされるところから。
  コンスタツェは捕らわれの身のままで、誠意あるトルコ太守セリムの愛情を受け入れるか、それとも婚約者のベルモンテの元へ逃亡するか、選択を迫られる。作品中では、ロバート・ケンプによる衣装――タイトなパンツ姿のヨーロッパ女性、黒いヴェールで身を隠すトルコ女性――が、トルコとヨーロッパの異なる歴史・文化を対照的に表現しており、現代のテロによる誘拐を想起せずにはいられない。と言っても物語は、報復より寛大な心と知恵をもってハッピーエンドで幕を閉じるのでご安心を。

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  肝心のオペラは、ドラムやシンボル、ベルなどトルコ音楽の特徴を取り入れた異国情緒たっぷりの序曲に続き、故郷遠く離れた空港のトランジット・ラウンジを舞台に、ベルモンテを演じるアンドリュー・グッドウィンの若々しく新鮮なアリアで開幕する。ベルモンテの恋人、コンスタンツェ役を演じるエマ・マシューズは、ソプラノでも高音を要求される難役を迫力ある声量と演技で目一杯に表現。特に、第1幕でベルモンテと引き離された心情を歌うアリア「ああ、私は恋をしていました」は聴きどころ。トルコの番人オスマンには、イギリス人バス歌手のピーター・ローズ。そのコミカルな演技とバスの超低音とのバランスを巧妙に取りながら演じ、回を追うごとに存在感を増しているとの評にも納得。
  モーツァルトと国際空港、なんとも想像し難い設定ではあるが、現代版「後宮からの逃亡」は、優れたキャストの歌と演技が生き生きと作品に命を与えており、極上のエンターテインメントに仕上がった。

[information]

▼上演時間:2時間45分(20分休憩1回)、歌ドイツ語(英文字幕)
▼劇場:オペラ・シアター(Opera Theatre, Sydney Opera House)
▼公演日時:8月1・4・10日7:30PM〜
▼料金:特別席$228、A席$183、B席$130、C席$99
▼予約

Opera Australia 2007年シドニー・ウインター・シーズン開幕

2007年07月02日

 オペラ・オーストラリアの恒例のウインター・シーズンが6月26日、「セルビアの理髪師」で華々しく開幕した。今ウィンター・シーズンはオペレッタからグランド・オペラ、そして伝統的作品から現代作品まで、バラエティーに富んだプログラムが予定されており、11月3日に行われる「ゴンドラを漕ぐ人」を最終公演に、全8作品が上演される。

楽しさ満載のオペラを現代風にアレンジ。
斬新性を強調した新プロダクション

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■The Barber of Seville
「セビリアの理髪師」/ロッシーニ作曲

 
  ロッシーニのオペラの中でも最もよく知られ、親しまれているオペラ・ブッファ(軽快で愉快なオペラ)、「セビリアの理髪師」。主人公、床屋のフィガロは街の何でも屋。伯爵と町娘の仲立ちをして、結婚させてしまうという話だ。モーツァルト作曲の「フィガロの結婚」はストーリー的には後日談にあたる。今回の公演は西オーストラリア州で活躍するジョン・ミルソンによるオペラ・オーストラリア初の演出とあり、前評判も高い。

○ストーリー
  時は1930年代、場所はセルビアのヘルス・スパという現代風な設定。舞台上のアール・デコ調の装飾が観客の目を引く。フィガロはそのリゾートでヘア・サロンを経営している。若いアルマヴィーヴァ伯爵は街一番の美人、ロジーナにひと目惚れするが、ロジーナにはリゾートの持ち主であるバルトロという欲張りで厳格な後見人がいる。そこで、アルマヴィーヴァ伯爵はフィガロに相談。フィガロは箱入り娘のロジーナと伯爵を、後見人の目を盗んでめでたく結婚させるという、コメディー・タッチのストーリーだ。
  フィガロ役には、2004年オペラ・オーストラリア公演の同題オペラでフィガロを演じ、好評を博したホセ・カーボが再び同役を熱演。町娘のロジーナにはソプラノ歌手のアメリア・ファルギアが始めて同役を演じるなど、歌と演技に優れたキャストが勢ぞろいしている。
  第1幕1場、フィガロが舞台に登場する時に歌う「私は町の何でも屋」や2場のロジーナの華やかなアリア「今の歌声は」など、軽快なメロディーで愉快なアリアが随所に盛り込まれており、聴き所が多い。第1幕のフィナーレには思わぬ展開が待ち受けており、ストーリーは一気に佳境へ。オペラ・ブッファ最大の見所でもある。

▼上演時間:2時間50分(20分休憩1回)、歌イタリア語(英文字幕)▼指揮:Richard Bonynge (7月14日公演まで)Brian castle-Onion ▼上演日:7月4日、7日マチネ、10日、12日、14日、21日マチネ、24日、27日、31日、8月3日、7日、9日、11日マチネ、15日、18日、24日、30日

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■Il Trovatore「イル・トロバトーレ」/ヴェルディ作曲
  原作は15世紀のスペインが舞台だが、エルケ・ネイハード演出のこの作品では20世紀のスペイン市民戦争を舞台にしている。美女をめぐる兄弟の宿命の戦いをドラマチックに表現し、音楽は勇壮で流麗な旋律が続く、典型的なイタリア・オペラ。

▼指揮:Sir Richard Armstrong  演出:Elke Neidhardt ▼上演時間:2時間35分(25分休憩1回)、歌イタリア語(英字幕) ▼上演日:7月3日、7日、11日、14日マチネ、17日、20日、25日、28日、30日、8月4日マチネ


■The abduction from the Seraglio
「後宮からの逃走」/モーツァルト作曲

 トルコの後宮にさらわれた恋人、コンスタンツェを救出するためにトルコにやって来るベルモンテ。トルコを舞台に、当時の異国趣味がモーツァルトの音楽に反映されたオペラ。オーストラリア人ソプラノ歌手、エマ・マシューズが初めて演じるコンスタンツェに期待。

▼指揮:Jonathan Darlington 演出:Michael Gow ▼上演時間:2時間45分(20分休憩1回)、歌ドイツ語(英文字幕)▼上演日:7月13日、18日、21日、28日マチネ、8月1日、4日、10日

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■A Streetcar Named Desire
「欲望という名の電車」/アンドレ・プレヴィン作曲

 テネシー・ウイリアムズ原作劇。4つのオスカーに輝いた、マーロン・ブランドとビビアン・リー主演よる同名映画は有名。ピアニスト、作曲家、指揮者として知られるアンドレ・プレヴィンが初めて作曲したオペラ作品。オーストラリアのベテラン・ソプラノ歌手、イヴォンヌ・ケニーをはじめ、若手のテファニー・スペイト、テディー・タフ・ローデスが出演する。オーストラリア初公演。

▼指揮:Tom Woods 演出:Bruce Beresford ▼上演時間:3時間20分(20分休憩2回)、歌英語(英字幕) ▼上演日:8月2日、8日、11日、14日、18日マチネ、25日、29日

■Il Trittico「三部作」/プッチーニ作曲

 珠玉の一幕ものを1つにまとめたプッチーニの傑作。世界の舞台で活躍するオーストラリア人オペラ歌手、チェリル・バーカー、ジョナサン・サマーズ、エリザベス・キャンベルが終結した豪華キャスト、素晴らしい演出で楽しさも3倍。

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○ストーリー
第1部 Il Tabarro「外套」

  時は1900年ごろ。パリのセーヌ川に浮かぶ伝馬船の船長ミケーレは若い妻のジョルジェッタと雇い人の沖仲士のルイージが恋仲であることに気付き、船上でルイージを絞め殺す。しかし、そこへジョルジェッタが戻ってきたため死体を自分の外套で包み隠し…。

第2部 Suor Angelica「修道女アンジェリカ」
  17世紀後半のイタリア。7年前に未婚で子を産み修道院へ入れられたアンジェリカ。妹への遺産相続の件で修道院を訪れた厳しい伯母から、愛しい息子が2年前に死んだことを知らされる。絶望したアンジェリカは薬草で毒を調合し、死を選ぶ--。

第3部 Gianni Schicchi「ジャンニ・スキッキ」
  金持ちのブオーゾは、遺産のすべてを修道院に寄付する遺言状を残して死ぬ。怒った親類は友人のジャンニ・スキッキに相談する。スキッキは自分がブオーゾになりすまして、公証人を呼び新しい遺言状を書き換えることを提案。その遺言状とは…。

▼指揮:Andrea Licata  演出:Moffat Oxenbould ▼上演時間:3時間20分(25分休憩2回)、歌イタリア語(英字幕) ▼上演日:8月17日、22日、28日、31日、 9月12日、15日、19日、22日、25日マチネ、26日

■The Tales of Hoffmann「ホフマン物語」
  /オッフェンバック作曲

 オペレッタで成功したオッフェンバックの本格的なオペラ。完成前に死去したため、友人のギローが後を継いで完成させた。主人公ホフマンの失恋を重ねたオムニバス形式の幻想的オペラ。

▼指揮:Richard Hickox  演出:Elke Neidhardt ▼上演時間:2時間50分(20分休憩1回)、歌フランス語(英字幕) ▼上演日: 9月1日、11日、14日、17日、20日、25日、10月3日、6日、9日、12日、15日、29日マチネ

■The Gondoliers「ゴンドラを漕ぐ人」
  /ギルバート&サリヴァン作

 オーストラリアの有名なエンターテイナー、レジ・リバモアをはじめ、ベテラン・オペラ歌手のジュディ・コネリーやジョン・ボルトン・ウッドが演じるカラフルなコメディー・オペレッタ。

▼指揮:Stephan Mould 演出:Stuart Mdaunder ▼上演時間:2時間50分(20分休憩1回)、歌英語(英字幕) ▼上演日: 9月18日、22日マチネ、27日、29日、10月2日、4日、6日マチネ、10日、13日マチネ、13日、17日、18日、19日、24日、25日、26日、29日、31日マチネ、31日、11月1日、3日マチネ、3日

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■Tannhauser「タンホイザー」/ワーグナー作曲

 官能の世界と清純な世界の両方を魅惑的に描いた、中世ドイツを舞台にしたロマンチックなオペラ。1845年ドレスデン宮廷劇場で初演されたオリジナル(ドレスデン版)と1861年パリの上演でバレエが拡大されて大きく改訂された(パリ版)、そしてその折衷版がある。主役タンホイザーはオーストラリア人テノール歌手グレン・ウインスレードとイギリス人テノール歌手リチャード・バークレースティールの2人が交替で演じる。

▼指揮:Richard Hickox 演出:Elke Neidhardt ▼上演時間:3時間50分(20分休憩2回)、歌ドイツ語(英字幕) ▼上演日:10月8日、11日、16日、20日、22日、23日、27日、30日、11月2日

Trying/劇「トライイング」

2007年06月04日

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大物 vs 若い秘書、同等の関係になるためには――
 元政界の大物と社会へ出て間もない秘書の、お互いの努力が試される物語「トライイング」。全く異なる背景を持った2人の人物が信頼関係を築いていく過程を、カナダ人劇作家のジョアンナ・マクレランド・グラスが実話を元に描いた。
 ルーズベルト大統領政権時の司法長官と、ニュルンベルグ裁判の裁判長を務めたフランシス・ビドルは81歳。新しい秘書のセーラは、カナダのサスカチュワン州出身の25歳。判事として輝かしい経歴をもつ老人ビドルが、孫ほども歳の離れた負けん気の強い聡明なセーラを秘書として迎えた日からストーリーが始まる。
 1967〜68年のワシントン。人生の末期にいるビドルは、最後の仕事として自叙伝を執筆している。妻が面接をしたという新しい秘書のセーラと対面するが、端から期待はゼロ。今までの秘書に随分失望していたからだ。どうせすぐ辞めるだろうと高を括り、初対面の挨拶も淡々と、セーラを歓迎する様子も全くない。
 高慢なビドルに反撥を覚えながらも、彼の要求をのみ、懸命に仕事をこなすセーラ。気難しい性格で、高飛車に命令するビドルの態度に耐えかねて時にはトイレで泣くこともあるが、仕事を立派にこなそうと努力を重ねる。一方のビドルも、そんなセーラの姿勢に今までの秘書とは違う、優しさと思慮深さを見る。
 そして、次第にビドルは彼女への態度を改めようと努力をするようになる。性別と年齢、立場を超えた信頼が芽生え始めたのだ。
 そんなある日、セーラが妊娠していること、夫とうまくいっていないことを知らされたビドルは、赤ちゃんを必ず産むよう泣き顔のセーラを励ます。だが、セーラのお腹が大きくなっていく姿を見守る一方で、老齢のビドルは事務所へ通うのもつらくなっていた。セーラは自宅でも仕事ができるようにと、テープに声を吹き込むディクタフォンの使い方をビドルに教え、それをセーラが事務所でタイプすることに。しかし、それも長くは続かず、ビドルの死期は刻一刻と近付いていた。
 そしてセーラの出産を控えたある日、ビドルが他界。主を失った事務所を片付けながら、セーラはビドルとの関係に思いを馳せる。仕事を通じていつしか友情にも似た、父娘のような深く暖かい絆で結ばれていた2人。その出会いはビドルにとっては人生最後の、若いセーラにとっては人生最初の大きな出来事となった――。
 オーストラリア初公演となる「トライイング」。アンサンブル劇場のアーティスティック・ディレクターである演出家のサンドラ・ベイツが2人の人間関係を知的に描き出した。死を予感する老紳士ビドルの心境を見事に演じたマイケル・クライグ。ビドルに冷たくされながらも、やがて彼の信頼と尊敬を勝ち得る秘書のセーラ、キャサリーン・マッグラフィン。ともに人と人との信頼関係が築かれていく過程を絶妙に演じている。
 古き良き時代の事務所の舞台セットと効果的な照明が、いっそう2人のキャストを生かし、洗練された出来栄えの「トライイング」となった。

information
▼劇場:エンセンブル・シアター(Ensemble Theatre, 78 Macdougall St., Kirribilli NSW)
▼公演日時:〜6月16日まで、火〜金8:15PM、土5PM・8:30PM、日 5PM
▼料金:$37〜$61 ▼予約
▼Web: www.ensemble.com.au