「ペンザンスの海賊」The Pirates of Penzance/Opera Australia
新鮮な演出がハチャメチャに楽しいオペレッタ
これはオペレッタ「ミカド」で知られるギルバート&サリヴァンによるかなり陽気な喜歌劇。ウィリアム・ギルバート作詞、アーサー・サリヴァン作曲の名コンビが送るこの「ペンザンスの海賊」は、支離滅裂なストーリーを随所に散りばめた楽しくかつ美しい曲で飾った名作だ。今公演は、豪州人演出家スチュアート・モーンダーによる初プロダクションであり、人気豪州人歌手が多数登場するとあって初演から話題になっている。
英国ビクトリア女王時代の物語だけあって、舞台を彩る派手な衣装が見るからに楽しそう。舞台セットは、最小限にとどめているもののすべてウィール付きセットなので、移動によって場面をいとも簡単に変えてしまう。本格的オペラの立派な舞台セットと比較すると少し見劣りするが、そこがまたオペレッタの楽しいところと言える。
キャストには演技力に優れた歌手が登場して、歌と演技で楽しませる。海賊の頭首を演じるアンソニー・ワーローはオペラ歌手ではないが、ミュージカルやオペレッタの人気歌手。甘い声と演技力で知られるテノール歌手のデービッド・ホブソンのフレドリック役、透き通るような声で歌うソプラノ歌手のタリン・フィービッグのメイベル役、そして、コメディーの役柄にかけては抜群の演技力を発揮するバリトン歌手のジョン・ボルトン・ウッドによるひょうきんな将軍役など、どれもまさに適役。
とてつもなくナンセンスなストーリーをコミカルに演出して、美しい曲と歌で飾り立て、ビジュアルに映える舞台で描く「ペンザンスの海賊」は、劇場を爆笑で包んでしまう。子供から大人までたっぷり楽しめるはずだ。
英文字幕付き英語による歌と台詞で人気絶賛公演中。
ストーリー
■第1幕
ペンザンスの海賊たちがフレドリック(David Hobson)の21歳の誕生日を祝っている。実はフレドリックの両親はパイロットの見習いをさせたかったが、乳母のルース(Suzanne Johnston)が“パイレーツ”と聞き間違えたことから、彼は8歳から21歳まで海賊の見習いの訓練を受けていたのだ。21歳でその契約が切れるので、フレドリックは海賊業を辞めて法律に従った職に就くと言い出す。この海賊たちは孤児の集まりで、捕虜が孤児であると釈放し、強いものを襲えば負けてしまうという海賊たち。ルースのみが、フレドリックの後を追って妻になりたいと言い出す。そこに若い娘が数人登場して、フレドリックは生まれて初めてルース以外の女性を見る。その中の1人のメイベル(Taryn Fiebig)と恋仲になる。海賊たちも娘たちと結婚したいと思うが、そこに娘たちの父親であるスタンリー将軍(John Bolton Wood)が現れる。一見勇敢そうに振舞うが、実は気弱な将軍。自分に勝ち目がないと悟った将軍は娘たちを取られたらすべてを失うと、自分がかつて孤児であったと訴える。それを聞いて海賊は将軍を自由にしてしまう。
■第2幕
先祖の墓地の前で自分が孤児であると嘘をついた呵責に問われるスタンリー将軍が、警官に海賊退治を命令する。フレドリックの前に海賊の頭首(Anthony Warlow)とルースが現れ、フレドリックはうるう年の2月29日生まれだから21回目の誕生日は84歳の時と伝える。忠誠心深いフレドリックは仕方なく海賊たちのもとに戻り、フレドリックは将軍が孤児だというのは嘘だと告げる。騙されたと知った海賊たちは怒って、スタンリー将軍家を襲う。海賊たちは警官たちとの一騎打ちとなった時、警部(Richard Alexander)から「ビクトリア女王の名の下に降参せよ」と言われ、女王を尊敬する海賊たちはいとも簡単に降参してしまう。海賊は娘たちから「とても心やさしい立派な人たち」と言われ、スタンリー将軍は娘たちとの結婚を承諾。ハッピーエンドで幕は閉じる。
information
▼公演:Opera Theatre, Sydney Opera House ▼公演日時:夜の部(7:30PM開幕)9月7・14・21・30日、10月6・12・14・19・20・25・27・31、11月1・2・3・4日、マチネ(1PM開幕)9月2・9・23日、10月28日、11月1・4日 ▼料金:プレミアム席$140、A席$110、B席$95、C席$65、D$42 ▼予約
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