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2006年08月31日

「ペンザンスの海賊」The Pirates of Penzance/Opera Australia

新鮮な演出がハチャメチャに楽しいオペレッタ

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 これはオペレッタ「ミカド」で知られるギルバート&サリヴァンによるかなり陽気な喜歌劇。ウィリアム・ギルバート作詞、アーサー・サリヴァン作曲の名コンビが送るこの「ペンザンスの海賊」は、支離滅裂なストーリーを随所に散りばめた楽しくかつ美しい曲で飾った名作だ。今公演は、豪州人演出家スチュアート・モーンダーによる初プロダクションであり、人気豪州人歌手が多数登場するとあって初演から話題になっている。
 英国ビクトリア女王時代の物語だけあって、舞台を彩る派手な衣装が見るからに楽しそう。舞台セットは、最小限にとどめているもののすべてウィール付きセットなので、移動によって場面をいとも簡単に変えてしまう。本格的オペラの立派な舞台セットと比較すると少し見劣りするが、そこがまたオペレッタの楽しいところと言える。
 キャストには演技力に優れた歌手が登場して、歌と演技で楽しませる。海賊の頭首を演じるアンソニー・ワーローはオペラ歌手ではないが、ミュージカルやオペレッタの人気歌手。甘い声と演技力で知られるテノール歌手のデービッド・ホブソンのフレドリック役、透き通るような声で歌うソプラノ歌手のタリン・フィービッグのメイベル役、そして、コメディーの役柄にかけては抜群の演技力を発揮するバリトン歌手のジョン・ボルトン・ウッドによるひょうきんな将軍役など、どれもまさに適役。
 とてつもなくナンセンスなストーリーをコミカルに演出して、美しい曲と歌で飾り立て、ビジュアルに映える舞台で描く「ペンザンスの海賊」は、劇場を爆笑で包んでしまう。子供から大人までたっぷり楽しめるはずだ。
 英文字幕付き英語による歌と台詞で人気絶賛公演中。

ストーリー
■第1幕
 ペンザンスの海賊たちがフレドリック(David Hobson)の21歳の誕生日を祝っている。実はフレドリックの両親はパイロットの見習いをさせたかったが、乳母のルース(Suzanne Johnston)が“パイレーツ”と聞き間違えたことから、彼は8歳から21歳まで海賊の見習いの訓練を受けていたのだ。21歳でその契約が切れるので、フレドリックは海賊業を辞めて法律に従った職に就くと言い出す。この海賊たちは孤児の集まりで、捕虜が孤児であると釈放し、強いものを襲えば負けてしまうという海賊たち。ルースのみが、フレドリックの後を追って妻になりたいと言い出す。そこに若い娘が数人登場して、フレドリックは生まれて初めてルース以外の女性を見る。その中の1人のメイベル(Taryn Fiebig)と恋仲になる。海賊たちも娘たちと結婚したいと思うが、そこに娘たちの父親であるスタンリー将軍(John Bolton Wood)が現れる。一見勇敢そうに振舞うが、実は気弱な将軍。自分に勝ち目がないと悟った将軍は娘たちを取られたらすべてを失うと、自分がかつて孤児であったと訴える。それを聞いて海賊は将軍を自由にしてしまう。

■第2幕
 先祖の墓地の前で自分が孤児であると嘘をついた呵責に問われるスタンリー将軍が、警官に海賊退治を命令する。フレドリックの前に海賊の頭首(Anthony Warlow)とルースが現れ、フレドリックはうるう年の2月29日生まれだから21回目の誕生日は84歳の時と伝える。忠誠心深いフレドリックは仕方なく海賊たちのもとに戻り、フレドリックは将軍が孤児だというのは嘘だと告げる。騙されたと知った海賊たちは怒って、スタンリー将軍家を襲う。海賊たちは警官たちとの一騎打ちとなった時、警部(Richard Alexander)から「ビクトリア女王の名の下に降参せよ」と言われ、女王を尊敬する海賊たちはいとも簡単に降参してしまう。海賊は娘たちから「とても心やさしい立派な人たち」と言われ、スタンリー将軍は娘たちとの結婚を承諾。ハッピーエンドで幕は閉じる。

information

▼公演:Opera Theatre, Sydney Opera House ▼公演日時:夜の部(7:30PM開幕)9月7・14・21・30日、10月6・12・14・19・20・25・27・31、11月1・2・3・4日、マチネ(1PM開幕)9月2・9・23日、10月28日、11月1・4日 ▼料金:プレミアム席$140、A席$110、B席$95、C席$65、D$42 ▼予約
Web:

2006年08月16日

「トゥーランドット」Turandot/Opera Australia

氷のように冷たい心を持つ姫が愛に目覚める

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トゥーランドット姫演じるジェニファー・ウイルソン

「トゥーランドット」はプッチーニの最後の、未完に終わったオペラ。第3幕「リュウの死」を書いて他界した後、弟子のアルファーノが残りを完成させた。舞台は中国の北京。絶世の美女トゥーランドット姫は、求婚者に3つの謎を解くことを求め、できなければ首を刎ねてしまうという冷酷な姫。その姫にひと目惚れしたダッタンの王子カラフが謎を解き、姫も心を開き、愛を知るという歌劇だ。
「トゥーランドット」の一番の聴きどころは、第3幕の王子カラフが歌うロマンチックで雄大なアリア「誰も寝てはならぬ」。一番の見所は第2幕、王子カラフが3つの謎を解いていく場面だ。ほかにも、ピン、ポン、パンの3人の大臣がおもしろおかしく演じる幕間劇や、見るからに心の冷たそうなトゥーランドット姫のアリア、そして王子カラフを密かに慕う奴隷のリューの叙情的なアリアも素晴らしい。
 今回のオペラ・オーストラリアのシドニー公演は、グラハム・マーフィーが1990年に演出したリバイバル作品であるが、ダンスの巨匠として知られる同氏は舞踏の振り付けも担当し、16年という歳月を感じさせない斬新な舞台に仕上がった。クリスチァン・フレドリクソンによる舞台セットと衣装デザインも、中国の話にしては日本的な衣装が多く見られ和中折衷という感はあるが、カラフルで想像力にあふれている。
 トゥーランドット姫はアメリカ人ソプラノ歌手のジェニファー・ウイルソンが演じる。姫の冷酷な心を力強い声量で歌い演じるウイルソンは、ひときわ存在感を感じさせる。姫にひと目惚れした王子のカラフはデニス・オニールが演じる予定であったが、突然の病気のため、7月公演を韓国人テノール歌手のドングワン・シンが急遽代役、大役を見事に務めた。奴隷のリューは同じく韓国人でソプラノ歌手のヒエ・セオング・クヮンが演じ、可憐で心やさしい娘役をこなす。
 美しいアリア、大合唱と大管弦楽を駆使した「トゥーランドット」。豪華で贅沢な舞台のシドニー公演はまたもや大盛況で公演中だ。

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■ストーリー
●第1幕 北京の城門
 役人が、トゥーランドット姫の花婿になるには、王子であることと、3つの謎を解かなくてはならないこと、そして謎を解けない王子は斬首の刑になると告げる。3つの謎を解けなかったペルシャの王子が処刑される時、トゥーランドットが現れる。その美しさに惹かれたダッタンの王子カラフは謎解きに挑戦。敗戦のため、逃亡の身にあるダッタン王のティムールと女奴隷のリューはカラフを懸命に止めるが、カラフの決意は固く、挑戦のドラを3回叩く。
●第2幕 天幕
 謎解きを見物しようと集まる町人たちの前で、トゥーランドット姫による謎が始まり、カラフは見事に3つの謎を次々と解き明かす。謎を解けば姫と結婚できる約束。しかし姫は結婚を拒む。皇帝である父に訴えるが、誓いは守らねばならぬと拒否される。そこでカラフは姫に謎を与え、夜明けまでに自分の名前が分かったら命を捧げると申し出る。
●第3幕 宮廷の庭
 役人たちは夜も寝ずにカラフの名前を調べている。父王と奴隷のリュウが捕えられ、拷問にかけられる。忠実なリュウは名前を明かすくらいならと、兵士の短刀を奪って自殺をする。その光景に、姫の心が溶け始める。カラフは姫に接吻をし、そっと自分の名前を告げる。そして群集の前に現れたトゥーランドットは、「彼の名前が分かりました。その名は愛」と高らかに告げる。

information
▼会場:Sydney Opera Theatre, Opera House ▼日時:[夜の部(7:30PM開幕)]8月1日、8日、14日、17日、23日、26日、29日、9月2日、6日、9日、12日[昼の部(1PM開幕)]8月5日、12日 ▼料金:プレミア席$220、A席$177、B席$125、C席$96、D席$52 ▼予約
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