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2006年11月08日

Priscilla Queen of the Desert, The Musical/ミュージカル「プリシラ」

傷つきながらも人生を謳歌する、ショーの世界に生きるゲイたち
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 約10年前、3人の女装ショー・ガール(ドラァグクイーン)を乗せたバス、砂漠の女王「プリシラ」号は、シドニーから砂漠の町アリス・スプリングスへと向かう旅に出発した。オーストラリア映画『プリシラ』(1994)は、オーストラリア国内で絶賛を浴びただけでなく、世界的にも大成功を収め、ついにはアカデミー賞受賞に輝く作品となった。
 10月、シドニーで開幕したミュージカル「プリシラ」はその舞台版。3人が旅する大型バス、砂漠の町アリス・スプリングス、キングス・キャニオンの岩場など、映画のストーリー同様にスケールの大きい見せ場にチャレンジしている。限られた舞台のスペースを上手に使った舞台は、オーストラリの舞台やミュージカルの演出にかけては第一人者、サイモン・フィリップスならではのものと言える。
 また、ミュージカル「プリシラ」は、ヒット・ソングが満載の歌と踊りがたっぷりのエンターテイメントでもある。ショーは「Downtown」でダイナミックに開幕、近年のポップソングを散りばめたディスコ・ミュージックが楽しめる。
 衣装も素晴らしい。衣装デザイナーのTim ChappelとLizzy Gardinerは、映画『プリシラ』の衣装部門でアカデミー賞を獲得した名コンビ。この2人が舞台の衣装も担当しており、映画以上に斬新なデザインとなっている。中でもコカトゥー、エミュー、エリマキトカゲ、コアラといったオーストラリアの動物をイメージした衣装や、カラフルで想像を超えたデザインには圧倒されるばかりだ。
 ミュージカル「プリシラ」は、生のパフォーマンスの魅力を最大限に堪能できる作品と言える。

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■ストーリー
 シドニーのゲイ・ショーの世界で働く3人のドラァグクイーン。3人の中では一番の年配で母親役的な存在のバーナデッテ(Tony Sheldon)は、かつてシドニー随一の歓楽街キングス・クロスのアイコン的ナイト・クラブ「レ・ガールズ」で働いていたことがあるベテランのショー・ガール。そのバーナデッテに友人のミッチ(Jeremy Stanford)が、仲間のフェリシア(Daniel Scott)と3人で砂漠の町でショーをやらないかと話をもちかける。意気投合した3人はさっそくバスで旅をすることに。そして、寝泊りができるバスを“プリシラ号”と名付け、いよいよ出発する。
 立ち寄った田舎町で偏見や差別を受けて傷付くことや、仲間同士でケンカをすることもあるが、そんな時は3人で陽気に歌を歌い、目的地へ向かって砂漠を進んでいく。途中、バスは人里離れた荒野で故障してしまう。修理にやって来たボブ(Michael Caton)は昔「レ・ガールズ」に行ったことがあり、バーナデッテに会って感激。若く挑発的なフィリピン人妻を捨てて、バーナデッテに惚れ込んでしまう。
 以前に結婚し、妻と8歳になる息子がアリス・スプリングスにいると告白するミッチ。
 若くて無謀なフェリシアは、鉱山の町のパブに大胆にも女装で出かけ、荒々しい男たちに暴行されそうになる。バーナデッテに救われるが、フェリシアは自分が化け物扱いされたショックに悲しみ沈む。バーナデッテは「シドニーの土地は狭いけど、私たちが生きていくスペースはあるのよ。ここは無限に広がる土地はあるけど、私たちが住むスペースはないわね」と優しくフェリシアに語る。
 ボブも便乗したバスはアリス・スプリングスに到着。ミッチは理解ある妻と息子に暖かく迎えられ、息子も父の姿をそのまま受け入れてくれる。カジノで行われた3人のショーは大成功。砂漠の岩場を舞台にして歌い踊ることが念願のフェリシアの夢も叶った。
 ショーを無事に終えてシドニーへ戻ることになった時、バーナデッテはボブとしばらく一緒にいることを決心。そんなバーナデッテを残して、しばらく預かる息子を連れたミッチとフェリシアは、再びバスに乗ってシドニーの帰路へ。
 一見幸せそうに見える彼女たちの人生は先の見えない冒険が常に待ち受けている。しかし、そんな不安を吹き飛ばすかのように、ステージは陽気に明るくフィナーレを迎える。

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information
▼劇場:Lyric Theatre, Star City, Edward St., Pyrmont NSW
▼公演日時:火〜土8PM、マチネ水1PM、土2PM、日5PM
▼料金:A席$95.90、B席$79.90(水マチネのみA席$75.90、B席$59.90)
▼予約:Ticketmaster
▼Web: ticketmaster.com.au

Titanic/ミュージカル「タイタニック」

映画と異なる格調高いミュージカル


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「タイタニック」といえば、1997年にケイト・ウィンスレットとレオナルド・ディカプリオの共演で公開された超大作映画『タイタニック』を思い出す人も多いはず。映画では、アイルランド人の貧しい移民ジャックと裕福な令嬢ローズが、当時世界最大の客船「タイタニック号」の船上で出会い、階級の違いを超えて恋をし、船の沈没によってはかなく消えた悲劇の恋を壮大なスケールで描いた。アメリカ国内のみでの総合興行収入は歴代最高の6億ドルを記録する映画史上に残る記録的なスマッシュ・ヒットとなった。
 ミュージカル「タイタニック」はその映画が放映される前、同年の1997年にブロードウエイで公開され、最優秀ミュージカル賞を含む5つのトニー賞に輝いた作品。ブロードウエイ公演を終了してから、アメリカで公演を行い、オランダ、カナダでも公演。オーストラリアではシドニーでこの10月26日開幕した。
 ミュージカル「タイタニック」は映画と異なり、ジャックとローズは登場しない。ミュージカルでは、1912年4月10日にイギリスのサウスハンプトンからニューヨークへ向けて処女航海に出航した豪華客船「タイタニック」号が、大西洋航行中の4月15日に氷山に衝突して沈没し、1,500人以上の客員が命を失うまでの事実を、実在の人物を登場させて描いた。
 劇中では、造船建築士、船の持ち主を取り巻いた船長室でのやりとり、ベンジャミン・グーゲンハイムやメイシーズ・デパートの持ち主、ストラウス夫妻を含む1等客室の大富豪の船上の生活、中産階級の2等客室の人たち、そしてアメリカに夢を抱く若い移民の3等客室の異なる階級をドラマ化。第1幕は豪華客船に乗船する人たちの期待と夢、第2幕は船が沈没していく模様と死に直面する人の姿勢を描いた。
 ミュージカル「タイタニック」は、脚本家ピーター・ストーンとモーリー・イェストンの音楽による作品。オペラ歌手のジョーン・カーディンを含む総勢たるキャストでおくる。ストーリーを反映したオリジナル音楽は、陽気な曲やメランコリックな曲など多彩。デュエットや「Godspeed Titanic」の力強い合唱など、オペラ的なオリジナル・ソングで飾られる。
 舞台は各階級の生活をデッキの上下で表現し、デッキの角度が上がるごとに沈んでいく船をイメージさせるシンプルだが効果的な構成。衣装も当時の階級の違いを忠実に表現している。ジョン・ディードリッヒ演出によるオーストラリア版「タイタニック」は、人間ドラマや超大型スケールなどエンターテイメント性に富んだ映画『タイタニック』とは異なる、上質で格調高いミュージカルと言える。 

information
▼劇場:Theatre Royal, 108 King St., Sydney NSW
▼公演日時:火7PM、水〜土8PM、マチネ水1PM、土2PM、日3PM
▼料金:火〜金&平日マチネA席$89、B席$79、水マチネA席$79、B席$69、土A席$95、B席$85
▼予約:Ticketek
▼Web:www.ticketek.com.au