>>> 25todayのトップページへ戻る

« Opera Australia IlTrittico/三部作 プッチーニ作曲 | メイン

Opera Australia IlTrittico/ホフマン物語、ゴンドラの漕ぎ手

 オペラ・シアターで上演されているオペラ・オーストラリアのウインター・シーズン公演も残すところ2カ月余り。10月8日上演開始のワーグナー作曲「タンホイザー」、そして9月から上演されている「ホフマン物語」と「ゴンドラの漕ぎ手」の3演目で、11月3日の最終日までの上演となる。今月は後者2作品を紹介する。

シアターレビュー

ホフマン物語
The Tales of Hoffmann
オッフェンバック作曲

異なる女性4役に堂々と挑戦
エマ・マシューズの力量に大喝采

「ホフマン物語」はドイツ・ロマン派の作家、E.T.A.ホフマンの短編小説をもとに、詩人ホフマン自身を主人公に3つの失恋を描いた幻想的な物語を、オッフェンバックの魅力的かつ官能あふれる作曲で描いた。
「天国と地獄」など数多くのオペレッタで成功した作曲家オッフェンバックが、初めて本格的オペラに力を注いだ作品だが、彼自身は完成前に死去。友人のエルネスト・ギローが後を引き継いで完成させたが、1881年にパリ・オペラ・コミック座で初演された後、オッフェンバック本人の意図が明らかでなかったことから幕の順序が異なる版が存在するなど混乱を生んだ。
  今回のシドニー公演はスチュアート・モーンダー演出により新しく制作されたもの。ロジャー・カークの舞台デザインは、対角に大きな壁を設置して舞台を2分割、2つの舞台セットを回転させる仕組み。天井に設置された鏡が舞台の広がりを高め、右手には大階段が常設されるなど、斬新で画期的な舞台を作り出した。モダンな舞台装置は、ナイジェル・レヴィングスによる照明デザインでさらに効果アップ。演出助手を兼ねるエリザベス・ヒルによる洗練された振り付けも舞台を大いに飾る。
  詩人ホフマンにはオーストラリア人テノール歌手のロサリオ・ラ・スピナ、同じくオーストラリア人のソプラノ歌手、エマ・マシューズが「オリンピア」、「ジュリエッタ」、「アントニア」そして「ステラ」という4役を個性豊かに演じ分けるという離れ業に挑戦し、見事にやってのけた。機械仕掛けの人形役「オリンピア」の滑稽なシーンでは、観客の爆笑を誘う一方、美しいコロラトゥーラのアリアも見事に歌いこなし、磨きがかかったエマ・マシューズの演技と歌唱力を楽しむオペラと言っても過言ではない。
  過去にいくつもの版が発表された「ホフマン物語」がまた、優れた制作チームとキャストよって、新鮮味あふれる洗練された作品になった。

シアターレビュー

■あらすじ
プロローグ―酒場

  詩人ホフマンの才能を愛する美と芸術の女神、ミューズ(Pamela Helen Stephen)はホフマン(Rosario La Spina)の恋人、美しいオペラ歌手のステラ(Emma Matthews)に嫉妬している。ミューズはホフマンの友人ニクラウス(Pamela Helen Stephen)に変身してホフマンと行動をともにする。酔客たちが楽しげに歌ったり踊ったりしている酒場へニクラウスと現れたホフマンは、学生たちの勧めで酒を飲むうちに、3つの恋愛話を始める。

「オリンピア」
―発明家スパラザーニ博士の応接間 

  博士(John Pringle)は人形作りのコッペリウス(John Wegner)に作らせた機械仕掛けの人形オリンピア(Emma Matthews)を自分の娘としてパーティーで披露する。人形は歌うが、途中でぜんまいが緩んで調子が狂う。コッペリウスからもらった魔法の眼鏡をかけ、オリンピアに一目惚れをするホフマン。しかし、スパラザーニ博士が不当な支払いをしたことに怒ったコッペリウスが、仕返しにオリンピアを破壊してしまう。

「ジュリエッタ」
―ベネチアの運河沿いの宮殿

  ニクラウスは高級娼婦ジュリエッタ(Emma Matthews)と『ホフマンの舟歌』を歌う。ジュリエッタに恋するホフマンは『熱い欲望をもって』を歌うが、ジュリエットを愛するシュレミル(Richard Anderson)はおもしろくない。そこに不気味な魔術師ダペルトゥット(John Wegner)が現れ、彼に宝石でそそのかされたジュリエッタは言い寄る男たちの“影”を奪い取る。ジュリエッタをめぐる決闘でシュレミルに勝ったホフマンは逃げ去るはめになる。

シアターレビュー

「アントニア」
―クレスペル家の一室

  母親譲りの美声の持ち主、アントニア(Emma Matthews)は胸の病に冒されており、父親のクレスペル(John Pringle)から歌うことを禁止されている。ホフマンがアントニアとの再会を喜ぶもつかの間、不気味なミラクル博士(John Wegner)が訪ねてくる。博士はアントニアの亡くなった母親の肖像画を操り、死に導くべく彼女に歌を歌わせる。歌い終わり、力尽きて倒れるアントニア。そこに父親が駆けつけるが、時遅く、彼女は息絶える。

エピローグ―酒場
  泥酔してテーブルにうずくまるホフマン。失恋相手の3人の女性は、つまりステラであるとニクラウスに言われて怒って暴れる彼の前に舞台を終えたステラが現れる。泥酔して正気を失ったホフマンは彼に歩み寄ってきた彼女にくってかかる。ステラは恋敵のリンドルフの腕にすがりながら連れられて出て行く。ニクラウスの姿をしていたミューズは元の姿に戻り、ホフマンはミューズの幻影を見る。

information

▼上演日時:10月3・6・9・12・15日7:30PM〜
▼上演時間:3時間10分(20分間の休憩1回を含む)、歌フランス語(英文字幕)
▼料金:$54〜$233
▼予約:(Opera Australia Ticket Services)、(Sydney Opera House Box Office)
▼Web:

 

 

シアターレビュー

ゴンドラの漕ぎ手
The Gondoliers
ギルバート&サリバン作曲・作詞

日常のたわいもないストーリーを
面白おかしく描いたコメディー

「ゴンドラの漕ぎ手」は滑稽なストーリーを軽快な音楽で綴った、ギルバート&サリバン作詞・作曲の陽気なオペラ。ギルバート&サリバン作詞・作曲の作品は、イギリス発祥のサヴォイ・オペラの代名詞ともされ、本格的オペラとはまた違った味で親しまれている。代表作品には「ミカド」や「軍艦ピナフォア」があるが、「ゴンドラの漕ぎ手」も傑作と言っていい。
  今回のシドニー公演は、昨年メルボルンで公演され、好評を博した時と同じキャストで贈る。エンターテイナーとして知られるレジ・リヴァモアを筆頭に、ジュディ・コネリやジョン・ボルトン・ウッドなど新旧のオペラ歌手が競演する。
  ブライアン・マクドナルドによる演出を元に、スチュアート・モーンダーが手を加え再演出。スーザン・ベンソンによる趣向を凝らした舞台とカラフルな衣装デザイン、やや大げさなエリザベス・ヒルによる振り付けも可笑みを増すのにひと役買っている。
  プラザートロ伯爵(Reg Livermore)と伯爵夫人(Judi Connelli)そして娘のカシルダ(Natalie Jones)をめぐるゴンドラの漕ぎ手たちと、その妻たちの陽気でたわいのないストーリー。小気味良いテンポで描いている今作品は誰もが楽しめるオペラと言える。

information

▼上演日時:10月2・4・10・13・17・18・19・24・25・26・29・31日、11月1・3日7:30PM〜、
マチネ10月6・13・31日、11月3日1PM〜
▼上映時間:2時間50分(20分1回の休憩を含む)、歌英語(英文字幕)
▼料金:$46〜$150
▼予約:(Opera Australia Ticket Services)、(Sydney Opera House Box Office)
▼Web: