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Opera Australia 後宮からの逃走

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 1782年ウィーンで初公演された「後宮からの逃走」は、モーツァルトが作曲した最初の本格的オペラ作品として知られる。ジングシュピールと呼ばれるドイツ語の歌芝居で、コロラトゥーラ的歌唱(ソプラノ独唱でよく行われる技巧的唱法)から超低音のバスまで、さまざまなアリアが盛り込まれており、モーツァルトの美しい旋律が存分に楽しめる。また、ストーリーも比較的単純で娯楽作品として楽しめる要素が強いのも特徴だ。

 

国際空港を舞台にしたモーツァルトの現代版オペラ エマ・マシューズの声量が光る

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 今回のオペラ・オーストラリア公演は2000年に初演され、その斬新な舞台設定が話題となったマイケル・ゴウ制作の再公演。ジョナサン・ダーリントンを指揮に迎え、ヒロインのコンスタンツェをオーストラリアの人気ソプラノ歌手、エマ・マシューズが初めて演じる。 
  ストーリーはヨーロッパの旅人がトルコ人に捕らわれ、遥かトルコのハーレムに売り飛ばされるところから。
  コンスタツェは捕らわれの身のままで、誠意あるトルコ太守セリムの愛情を受け入れるか、それとも婚約者のベルモンテの元へ逃亡するか、選択を迫られる。作品中では、ロバート・ケンプによる衣装――タイトなパンツ姿のヨーロッパ女性、黒いヴェールで身を隠すトルコ女性――が、トルコとヨーロッパの異なる歴史・文化を対照的に表現しており、現代のテロによる誘拐を想起せずにはいられない。と言っても物語は、報復より寛大な心と知恵をもってハッピーエンドで幕を閉じるのでご安心を。

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  肝心のオペラは、ドラムやシンボル、ベルなどトルコ音楽の特徴を取り入れた異国情緒たっぷりの序曲に続き、故郷遠く離れた空港のトランジット・ラウンジを舞台に、ベルモンテを演じるアンドリュー・グッドウィンの若々しく新鮮なアリアで開幕する。ベルモンテの恋人、コンスタンツェ役を演じるエマ・マシューズは、ソプラノでも高音を要求される難役を迫力ある声量と演技で目一杯に表現。特に、第1幕でベルモンテと引き離された心情を歌うアリア「ああ、私は恋をしていました」は聴きどころ。トルコの番人オスマンには、イギリス人バス歌手のピーター・ローズ。そのコミカルな演技とバスの超低音とのバランスを巧妙に取りながら演じ、回を追うごとに存在感を増しているとの評にも納得。
  モーツァルトと国際空港、なんとも想像し難い設定ではあるが、現代版「後宮からの逃亡」は、優れたキャストの歌と演技が生き生きと作品に命を与えており、極上のエンターテインメントに仕上がった。

[information]

▼上演時間:2時間45分(20分休憩1回)、歌ドイツ語(英文字幕)
▼劇場:オペラ・シアター(Opera Theatre, Sydney Opera House)
▼公演日時:8月1・4・10日7:30PM〜
▼料金:特別席$228、A席$183、B席$130、C席$99
▼予約